橘たかし no 皆の仲間: 第4回 ブラック企業とは私の就労体験から言える事

2021-06-15

第4回 ブラック企業とは私の就労体験から言える事

今回は経営統合の話をします。

私が勤めた会社も時代の潮流に飲まれ経営統合しました。

2013年に3社が経営統合しました。

実は、この経営統合以前の1992年にも1社を吸収合併した事がありました。

この時は経営難に陥った同業他社を救済する目的で合併しました。

営繕すら満足に成しえなかった

働く場所はそのままで組織図だけ変わる手軽な経営統合もありますが私が勤めた会社の場合働く場所ごと移りました。

イメージとしては全く新たな建物に各会社が集まるといったものでなく元々その業界の協会的組織が使っていた建物のスペースを空けていき各会社の部署単位に移っていきました。

ですから最初に移っていった営業部から最後に移った私が所属する電算部まで約2年近く掛かっています。

電算部ですから各部署にタイムリーな情報を提供していました。

当時はまだ媒体は紙が中心でしたが部署間が遠方になったのを契機に直にデータを渡す方法に移っていきました。

その時活躍したのがHULFTです。

データ転送によりホストコンピュータから各部署のファイルサーバや担当者のパソコンへ今まで紙で渡していた情報をCSV形式で送るようになりました。

これにより人手を介した印刷作業が自動化できましたが最後まで自動化できなかったのがデータのバックアップです。

外部からのネットワークへの不正侵入があった際データを守る確実な手段はネットワークから完全に切り離された媒体(CMT)でデータを保管しておく事です。

つまりCMTをデータを読み書きする装置にセットする作業がどうしても人手を介します。

最終的には手順を完全にマニュアル化してホスタコンピュータをアウトソーシングした会社にこの一連の作業も委託しました。

そして最後の難問が仕事で使っている書類をどうするかです。

移行先の協会関係者からは移行先のスペースは非常に狭いので今ある書類を保管する棚を設置する余裕がないので書類はすべて電子化(PDF化)して使ってほしいと依頼されました。

(追記)

協会関係者のこの発言は依頼でなく希望です。

会社にどれだけの書類があるか把握して発言してるわけではありません。

つまり世の中はペーパレス化が叫ばれているのでこの機会に取り組んでみればというアドバイスにしか過ぎません。

書類の電子化には電子化する機能を備えたコピー機を使うのが一般的です。

今でこそ標準装備としてコピー機に備わっていますが当時はまだ珍しく新たな機器を購入する必要がありました。

そこで、その機能を備えたコピー機を販売していた3社(NEC、富士ゼロックス、他)に合同コンペを依頼しました。

3社3様で優劣が決めがたく選定は難航しました。

結局、値引き額で富士ゼロックスが優位と判断しました。

そして、その事を協会関係者へ伝えると

「もともと、うちは富士ゼロックスを使っているので他のメーカーを使うつもりはさらさらない。」

と告げられました。

(追記)

これも協会関係者からしてみればアドバイス程度でこの機に及んで機種選定など何を勝手なことをしてるんだと逆に憤慨してるのです。

つまりあなたの会社が勝手にしてる事という立場です。

これには私達もかなり憤慨しました。

「だったら最初からそう言ってくれればいいのに。」

機種選定が終わりいよいよ書類の電子化に着手しました。

電子化には臨時アルバイトを雇い終日膨大な書類をひたすらスキャンする作業をお願いしました。

しかし電子化された書類では実務は無理と現場からクレームがあがりました。

当時の液晶モニタはサイズが15インチくらいが中心です。

そうするとA3サイズの書類など画面に一度に表示するには縮小するしかありません。

しかし詳細な部分は拡大といった縮小、拡大の繰り返す操作が煩わしく非効率でした。

そこでどうしても電子化しない方が良いと判断した書類は最小限残して移行先に持ち込むことになりました。

引越し当日新たな職場に赴いた我々は広々と置かれた棚を目の当たりにした時呆然としました。

(追記)

協会関係者の本音は先に書きました。

しかし会員には逆らえません。

そこで会員である我が社と打ち合わせした際どうもこの会社は膨大な書類を持ち込むらしいと忖度し急きょ膨大な棚をしつらえたのです。

こうすれば会員様に喜んで頂けるだろうと勝手に推察します。

「電子化なんかしなくても十分収納するスペースあるじゃん。」

何もかもがちぐはぐで思惑通り全く物事が運びませんでした。

最後に専門家の見識を紹介

経営統合に関しては京都大学助教授の川端祐一郎さんの研究が非常に参考になります。

川端さんは日本郵便公社に入社され郵政民営化という歴史に残る大変革を直に体験された方です。

郵政民営化により組織内でどういった事がおき一般社会がもつイメージとは全く違う効用をもたらしたか大変興味深い発言をされています。

川端さんの発言の主旨は以下のものです。

「組織統合や改編は効率化による経済的効果が主な目的だが現実は全く逆だ。経験値を喪失してしまい、その経験値を元に戻すマンパワーは計り知れない。」

私の考えも補足すると次のような事だと思います。

組織内にいる人間にはドキュメントやマニュアルといった第三者がみて可視化できるもの以外に個々の経験による可視化できないものが多分に働いています。

それらが組織統合や改編により一旦失われると可視化されていない以上修復は困難を極めるのだと思います。

もっと具体例を示します。

最近会社であった出来事です。

私は、あるアルバイトの大学生に封綴じをお願いしました。

しばらくして大学生は1通の封筒を持って私のところへ来ました。

「すいません、1通封綴じを失敗しちゃってノリがはみだしてるんですがどうしましょう。」

私は、こう答えました。

「はみだした糊を誤魔化すのなら消しゴムを使えば良いけど時間がかかるから今回はしょうがないので総務課の村本さんにお願いして新しく宛名を印刷した封筒をもらってきて。」

またしばらくして大学生は私のところに来ました。

「新しい封筒をもらってきましたが、これどうするんですか。」

私はハッとして新しい封筒へ入れ直せば良いと伝えたあと、その場を離れ喫煙ルームに向かいました。

煙草をくぐらせながら、こう思いました。

こういった細かな事は経験則がないと対応できないと分りました。

(追記 2021.7.12)

この内容からは的確な例えになってないようですが違います。

日常PCやスマホがコミュニテーション方法の人にとって封筒は未知のツールです。

逆に高齢者が初めてPCに触るのと同じ感覚だと思います。

ある高齢者がたまたま参加したPC教室で講師に「はい、それではマウスでカーソルを上に移動しましょう。」と指示されました。

するとその高齢者はマウスを高々と頭の上に掲げたそうです。

記録するまでもない些細な行いは日常枚挙にいとまがありません。

組織内の行動とは、こうした些細な行いが大半で記録に留めたものなど極一部にすぎません。

結局、経営陣が思い描く経営統合とは複数の組織にあった部署(総務部とか営業部など)を一つにまとめると各組織で行っていた仕事で重複していたものがなくなり効率化するといったイメージだと思います。

はたしてそうなのでしょうか。

実は今のPCを使った仕事のスタイルはかなり効率化が進んでいます。

PCを中心にちょっとした作業手順の変更だけでかなり効率化したりします。

しかし経営陣には組織統合や改編といった大鉈を振るい大変革しないと気が済まない気風があります。

そんな事でもしないと自分は何のためいるのか不安に駆られる心境です。

だから妙な幻想に捕らわれいつまでたってもこうした事態を繰り返すのです。(つづく)

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